突然ですが、「絵本を作る」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?
「子どものためのもの」「プロの作家が描くもの」…そんな風に考える方が多いかもしれません。

しかし、絵本作りには驚くほどの可能性があります。
それは、「自己理解を深めること」、そして「人生を豊かにすること」。

実は、私自身も最初からこの価値に気づいていたわけではありません。
むしろ、人生が大きく揺らいだとき、偶然のように絵本作りと出会ったのです。

退職、コロナ禍、そして
不安に包まれた日々

2019年、私は正社員として働きながら、パーソナルトレーナーの副業をしていました。
少しずつ軌道に乗ってきたこともあり、「独立しよう!」と決意。正社員を辞める準備を進めていました。

ところが、2020年に入ると状況は一変。
あの「コロナ禍」によって、仕事が激減。収入も大きく落ち込みました。
すでに退職を決めていたため、後戻りはできません。

そして2020年3月、ついに会社を辞めました。

しかし、その直後に1回目の緊急事態宣言が発令され、思い描いていた独立の道は完全に閉ざされました。

貯金を切り崩す日々。先の見えない不安。
「もうダメかもしれない…」と、心が追い詰められていました。

そんなとき、後に妻となるりえが言った一言が、僕の人生を大きく変えることになります。

「絵本を描いてみたら?」

「絵本なんて…」と思っていたけれど

正直、その提案にはピンときませんでした。
「こんな状況で、絵本を描く意味なんてあるのか?」とさえ思ったほどです。

でも、ふと子どもの頃を思い出しました。
私は生まれつきの心臓病で体が弱く、外で遊ぶことができなかった幼少期。
私にとって、唯一の楽しみは「絵本を読むこと」でした。

その記憶が蘇った瞬間、絵本を描くことに少し興味が湧いてきたのです。

描き始めると、人生が動き出した

最初は、「コンテストに応募して出版を目指そう!」という単純な目標でした。
実は、昔からイラストや漫画を描くのが好きで、小学生の頃には『コロコロコミック』に絵が掲載、中学では『少年サンデー新人コミック大賞』に名前が載ったこともあります。
大人になってからは漫画賞で受賞したこともありました。

だから、「絵本のコンテストも挑戦すればいけるかも?」と思っていました。

でも、描き進めるうちに、ある変化に気づきました。

「あれ? なんだか気持ちが楽になっている…?」

あれほど不安だった気持ちが、絵本を描いている間だけは和らいでいたのです。

夢中で絵を描き、物語を考える時間が、僕の心を救ってくれた。
「これは単なる創作じゃない。絵本作りには、人の心を整える力があるのでは?」

そう考えるようになったとき、僕の人生は大きく変わり始めました。

絵本が仕事につながるなんて、思ってもいなかった

絵本をInstagramに投稿し始めて数ヶ月後、驚くべきことが起こりました。

ある保護猫団体の方から、絵の依頼をいただいたのです。

「え!? まさか、こんな形で仕事につながるなんて!」

驚きと嬉しさでいっぱいでした。

さらに、話を聞くうちに、野良猫や多頭飼育崩壊の問題を知り、「猫のために何かできることはないか」と考えるように。

その結果、僕はボランティアで絵を描くことを決意しました。
そして誕生したのが、絵本『かいねこきぶん』です。

この絵本を通じて、たくさんの人とつながり、「絵本作りの可能性」を本気で追求するようになりました。

絵本作りは、人生を変えるツール

最初は趣味だった絵本作りが、「自己理解」や「人とのつながり」を生むものだと気づきました。

そこで、心理学や教育の要素を取り入れた「絵本作りプログラム」を考案。

このプログラムは、絵が苦手な人でも大丈夫。
むしろ、「自分を見つめ直すこと」が目的です。

例えば、こんな悩みを抱えている方におすすめです。

「自分のやりたいことが分からない…」
「新しい一歩を踏み出したいけど、どうすればいいか分からない…」

実は、自分で作る絵本には、自分の価値観や考え方がすべて詰まっています。
それを形にすることで、自分の軸を見
つけ、未来へのヒントを得ることができます。

実際にカウンセラーや研修講師の方々からも、
「これは面白い! ぜひ自分の活動にも取り入れたい」と高い評価をいただいています。

そして…

2025年8月に愛知県で開催される 日本人間性心理学会 第44回大会 で、
僕たちの「絵本作りプログラム」がワークショップとして正式に採択されました!

今後は特に、教育現場や福祉の分野、心理支援の場面での活用していただき、絵本作りがこれからの社会において「人と人とがつながる新たな方法」として広がり、心理支援のスキルとしても確立される可能性を探求していきたいと思います。